日本の所得税の課税関係を検討するにあたっては、まず、その方が所得税法上の納税義務者の区分のどれに当たるかを確定させる必要があります。この区分によって日本で課税される所得の範囲そのものが変わるためです。区分の判定を誤ると、源泉徴収・年末調整・確定申告のすべてに影響が及びます。本記事では、所得税の納税義務者の区分と、その判定方法について解説します。
1.納税義務者の区分
所得税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に区分し、さらに居住者を「非永住者」と「非永住者以外の居住者」に区分しています。整理すると、次の3つに分かれることになります。
- 非永住者以外の居住者
- 非永住者
- 非居住者
非永住者は居住者の一部であり、この3つが横並びの関係にあるわけではありません。そのため判定は、まず居住者か非居住者かを判定し、居住者に該当する場合にさらに非永住者に該当するかを判定する、という順序で行います。
また、この区分は国籍や在留資格等によって機械的に決まるものではなく、住所または居所という事実関係に基づいて判定されます。
2.居住者と非居住者の判定
居住者とは、国内に住所を有する方、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する方をいい、居住者以外の方が非居住者となります。
(1) 住所と居所
ここでいう住所とは、生活の本拠を指し、生活の本拠がどこにあるかは住居の状況、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の居所、資産の所在などの客観的な事実に基づいて判定されます。
また、居所とは、生活の本拠とまではいえないものの、相当期間継続して居住する場所をいいます。国内に住所がない場合であっても、引き続き1年以上居所を有していれば居住者に該当します。
(2) 住所の推定
実務上、生活の本拠がどこにあるかの判断は容易でないため、所得税法施行令に推定規定が置かれています。
国内において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合などは、国内に住所を有するものと推定されます。逆に、国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合などは、国内に住所を有しないものと推定されます。
例えば、契約等によりあらかじめ在留期間が1年以上と定められている場合には、入国した日から居住者として取り扱われる(推定される)ことになります。1年経過後に居住者になるわけではありません。
(3) 留意点
例えば、以下のものはそれぞれ判定の要素ではありますが、直接的に判定を確定させるものではありません。
- 183日超の滞在:諸外国では、国内法において一定の滞在日数を居住者の判定基準とする例がありますが、日本の所得税法は、あくまで住所または居所の有無により判定します。なお、租税条約における短期滞在者免税の要件の一つとして183日という日数が登場しますが、これは納税義務者の区分の判定とは別の論点です。
- 在留資格の種類・在留期間:判定のための参考にはなりますが、これのみで確定されるわけではありません。
- 住民票登録の有無:判定のための参考にはなりますが、これのみで確定されるわけではありません。
3.非永住者の判定
(1) 定義・判定
居住者のうち、次の2つの要件を満たす方が非永住者に該当します。
- 日本の国籍を有していないこと
- 過去10年以内において、国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下であること
したがって、日本国籍を有する方が非永住者に該当することはありません。外国籍の方が日本に居住することとなった場合は、当初はこの非永住者に該当するのが通常です。
(2) 期間の数え方
「過去10年以内」の期間は、判定する日の10年前の同日から、判定する日の前日までの期間をいいます。この間に国内に住所または居所を有していた期間を通算し、その合計が5年以下であるかどうかを判定します。過去に来日していた期間がある場合は、その期間も通算されます。
この判定は日々行われるため、在留が続くことにより、年の中途で非永住者に該当しなくなることがあります。該当しなくなった時点から非永住者以外の居住者となり、課税される所得の範囲が広がります。長期にわたる在留が見込まれる場合には、通算5年に到達する時期をあらかじめ把握しておく必要があります。
4.課税所得の範囲
納税義務者の区分が確定すると、日本で課税される所得の範囲も確定されます。
| 区分 | 課税される所得の範囲 |
|---|---|
| 非永住者以外の居住者 | 国内・国外を問わず、すべての所得 |
| 非永住者 | 国外源泉所得以外の所得の全部、および国外源泉所得のうち国内で支払われたもの、または国外から国内へ送金されたもの |
| 非居住者 | 国内源泉所得のみ |
非永住者の課税範囲については、国外源泉所得の範囲や、送金があった場合の取り扱いなど検討すべき事項が多いため、詳細は別の記事にて記載します。
5.年の中途で区分が変わる場合
入国や出国により、年の中途で区分が変わることがあります。この場合、同一の年の中に非居住者であった期間と居住者であった期間が併存することになります。
年の中途で入国して居住者となった場合は、居住者であった期間中の所得(非永住者に該当する場合は4の範囲によります)と、非居住者であった期間中の国内源泉所得とを合わせて確定申告を行うことになります。
年の中途で出国して非居住者となる場合は、出国の時までに確定申告を行うか、納税管理人を定めて所轄税務署長に届け出たうえで、通常の期限までに申告する方法があります。
6.おわりに
納税義務者の区分は、以上のとおり住所または居所という事実関係に基づいて判定されます。もっとも、その判断や課税所得の範囲については、検討を要する部分が生じることがあります。例えば、日本と相手国の双方で居住者と判定される(いわゆる双方居住者に該当する)場合の取り扱い、租税条約の検討、個人住民税の取り扱い、給与が国外で支払われている場合の源泉徴収義務など、その内容は多岐にわたります。
当事務所では、例えば外国からの出向者の受入れに伴う税務や、国外が関係する個人の確定申告について対応しております。個別的なご相談やサポートも展開しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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- 本記事は、執筆時点の法令・通達等に基づいて作成した一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の取引や個別事案に対する税務上の助言を行うものではありません。税法の解釈・適用は個々の事実関係により異なり、また法改正等により内容が変わる可能性があります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
- 国外が関係する取引の場合、日本国内の法令だけでなく、国外現地での課税関係や租税条約も考慮のうえ、課税関係を検討する必要があります。
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