外国の証券口座で株式を保有している方や、海外に不動産・預金をお持ちの方には、所得税の確定申告とは別に「国外財産調書」の提出が必要となる場合があります。国外財産調書は、その年の12月31日時点で一定額を超える国外財産を保有している場合に提出が求められる書類で、提出の有無によって加算税が軽減または加重される仕組みが設けられています。本記事では、国外財産調書の制度概要、提出義務の判定、提出しなかった場合の不利益などについて解説します。

1.国外財産調書とは

 国外財産調書とは、一定額を超える国外財産を保有する方が、その保有状況を税務署に報告するための書類です。国外財産に関する所得や相続財産の申告漏れを防止する観点から、平成24年度の税制改正で創設されました。

 なお、国外財産調書は所得税の確定申告とは独立した制度です。したがって、その年の所得が少なく確定申告が不要な方であっても、12月31日時点の国外財産の保有状況によっては、国外財産調書のみを提出しなければならないことがあります。

2.提出義務者

 国外財産調書の提出義務があるのは、その年の12月31日において、価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する「非永住者以外の居住者」です。

 日本に住む日本国籍の方や日本で一定の期間以上勤務・生活している外国籍の方は、この「非永住者以外の居住者」に該当するのが一般的です。

3.国外財産の範囲と所在の判定

 「国外財産」とは、国外にある財産をいいますが、財産が国外にあるかどうかは、財産の種類ごとに定められた基準により判定します。主なものは以下のとおりです。

財産の種類 所在の判定基準
不動産・動産 その所在地
預金・貯金 預入をした金融機関の営業所等の所在
株式等の有価証券 原則として、その口座が開設された金融機関の営業所等の所在
暗号資産 その財産を有する方の住所の所在

 有価証券や暗号資産は所在の判定を誤りやすいので、記載の際は留意してください。例えば、外国の証券口座で管理している有価証券はもちろん、RSUやESPP等の株式報酬により取得した株式を外国の証券口座で保有している場合もその株式は国外財産に該当します。一方、暗号資産は海外の取引所で保有していても国外財産には該当しません(7の財産債務調書への記載を検討する必要があります)。

4.記載内容と価額の評価

 国外財産調書には、提出者の氏名・住所等のほか、国外財産の種類、数量、価額、所在等を記載します。財産の種類ごとに区分し、用途別(一般用・事業用)・所在別に記載する様式となっています。

 財産の「価額」は、その年の12月31日における時価によることが原則ですが、時価の算定が困難な場合には見積価額によることも認められています。外貨建ての財産については、その年の12月31日における為替相場により邦貨換算を行います。

5.提出方法・期限

 国外財産調書は、その年の翌年6月30日までに、住所地等の所轄税務署に提出します。提出の際は、調書本体とあわせて「国外財産調書合計表」(財産の種類ごとの合計額を記載する表紙にあたる書類)を添付します。書面での提出のほか、e-Taxによる提出も可能です。

6.加算税の軽減・加重と罰則

 国外財産調書制度には、適正な提出を確保するための特例措置が設けられており、提出の有無等に応じて、申告漏れがあった場合の加算税が軽減又は加重されます。

(1) 期限内に提出した場合:過少申告加算税等の軽減

 国外財産調書に記載された国外財産に関して所得税や相続税の申告漏れが生じたときは、その部分に係る過少申告加算税又は無申告加算税が5%軽減されます。

(2) 期限内に提出しなかった場合:過少申告加算税等の加重

 国外財産に関して所得税の申告漏れが生じたときは、原則として、その部分に係る過少申告加算税又は無申告加算税が5%加重されます。なお、提出された国外財産調書に国外財産の記載がなかった場合や重要な記載不備があった場合もこれに含まれます。

(3) 刑事罰

 国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合や、正当な理由なく期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることがあります(期限内に提出しなかった場合については、情状により刑を免除できることとされています)。

7.財産債務調書との関係

 国外財産調書と似た制度として、財産債務調書があります。こちらは国内・国外を問わず財産と債務の保有状況を報告する書類で、
①その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において価額の合計額が3億円以上の財産又は価額の合計額が1億円以上の有価証券等(国外転出特例対象財産)を有する方
②所得金額にかかわらず、その年の12月31日において価額の合計額が10億円以上の財産を有する方
が提出義務者となります。提出期限は国外財産調書と同じく翌年6月30日です。

 国外財産調書と財産債務調書の両方の提出義務がある場合、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書への内訳の記載は不要とされています。

8.おわりに

 国外財産調書は、それ自体が税額の計算に直結する書類ではないため見落とされがちですが、提出の有無が加算税の軽減・加重等に影響する重要な制度です。特に、株式報酬により外国の証券口座で株式を保有している方は、近年の株価の上昇や円安により、気付かないうちに5,000万円を超えて提出義務が生じるケースもあります。

 当事務所では、国外財産調書の作成・提出のほか、国外の証券口座やRSU・ESPP等の株式報酬に関する確定申告のサポートを行っております。ご自身に提出義務があるかどうかの確認を含め、お気軽にお問い合わせください。

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参考法令等:国送法5、6、6の2、10

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