海外投資や海外赴任後の帰国等により、国外の銀行口座や証券口座をお持ちになる方が増えています。これらの口座で利子や配当を受け取った場合、国内の口座で受け取る場合とは日本での課税関係が異なり、確定申告が必要になるケースが少なくありません。本記事では、個人が国外にある口座で受け取る利子・配当について、基本的な課税関係を解説します。
なお、本記事は、日本にお住まいの方(非永住者以外の居住者に該当する方)が、国外にある口座で直接利子・配当を受け取る場合を前提としています。非永住者や非居住者に該当する方については、本記事の内容と課税関係が異なりますのでご留意ください。
また、本記事で解説するのは日本における課税関係であり、国外現地での課税関係については扱っておりません。実際には、現地での課税や租税条約の内容も含めて検討する必要があります。
1.国内の口座との違い
まず、国内の口座で利子・配当を受け取る場合との違いを確認します。
国内の金融機関を通じて利子や配当を受け取る場合、その支払いの際には原則として日本の所得税・住民税が源泉徴収されます。そして、この源泉徴収によって課税関係が完結する仕組み(源泉分離課税)や、確定申告をするかどうかを選択できる仕組み(申告不要制度)が設けられているため、国内の口座で受け取る利子・配当については、確定申告を行っていない方が多いと思われます。
一方、国外にある口座で直接利子や配当を受け取る場合、日本の金融機関が関与しないため、日本の所得税・住民税の源泉徴収は行われません。したがって、源泉分離課税や申告不要制度の対象とはならず、原則として確定申告により納税を行う必要があります。
「国内の口座で受け取る場合は確定申告が不要であったものが、国外の口座で受け取る場合は確定申告の要否を検討する必要がある」という点が、以下で確認する各論に共通する考え方です。
なお、外国の株式や債券であっても、国内の証券口座で保有している場合には、本記事の説明とは取り扱いが異なりますのでご注意ください。
2.利子の課税関係
(1) 銀行預金の利子
国外の銀行に預けている預金の利子は、利子所得として総合課税の対象となります。給与所得等の他の所得と合算したうえで、累進税率により課税が行われます。
国内の銀行預金の利子は源泉分離課税の対象であるため、受け取った時点で課税関係が完結します。これに対し、国外の銀行預金の利子は源泉徴収が行われないため、この仕組みの対象とはならず、確定申告が必要となります。
また、利子所得については必要経費を差し引く仕組みがなく、収入金額がそのまま所得金額となります。
(2) 公社債の利子
国外の証券口座で保有する公社債の利子のうち、外国の国債や外国法人が発行した公募の社債など、「特定公社債」に該当するものについては、20.315%の税率による申告分離課税の対象となります。
国内の証券口座で受け取る特定公社債の利子については確定申告を不要とすることができますが、国外の口座で直接受け取る場合は源泉徴収が行われないため、確定申告が必要となります。
私募債など「一般公社債」に該当するものについては、取り扱いが異なりますのでご留意ください。
3.配当の課税関係
(1) 外国法人の上場株式の配当
外国の金融商品取引所に上場されている株式の配当は、配当所得として、20.315%の税率による申告分離課税と、他の所得と合算する総合課税のいずれかを選択することができます。
国内の証券口座で受け取る上場株式の配当については確定申告不要制度を選択することができますが、国外の口座で直接受け取る配当は源泉徴収が行われないため、この制度の対象とはならず、確定申告が必要となります。
(2) 配当控除
総合課税を選択した配当所得については、配当控除という税額控除の適用を受けられる場合がありますが、この配当控除は内国法人から受ける配当を対象とするものであるため、外国法人から受ける配当には適用がありません。
4.課税関係のまとめ
ここまでの内容を整理すると、以下のとおりです。比較のため、国内の口座で受け取る場合を参考として併記しています。
※ 表は横にスクロールできます。
| 受け取る所得 | 所得区分 | 課税方式 | 税率 | 確定申告 |
|---|---|---|---|---|
| 国外の銀行預金の利子 | 利子所得 | 総合課税 | 累進税率+住民税10% | 必要 |
| 国外の特定公社債の利子 | 利子所得 | 申告分離課税 | 20.315% | 必要 |
| 外国法人の上場株式の配当 | 配当所得 | 申告分離課税・総合課税の選択 | 20.315%/累進税率+住民税10% | 必要 |
| (参考)国内の銀行預金の利子 | 利子所得 | 源泉分離課税 | 20.315% | 不要 |
| (参考)国内の証券口座で受け取る上場株式の配当 | 配当所得 | 源泉徴収+申告不要の選択可 | 20.315% | 不要とすることが可能 |
※ 上記の20.315%は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計です。総合課税の場合は、所得税の累進税率(5%〜45%)に住民税10%が加わります。
※ 投資信託の収益の分配については、その投資信託の区分により所得の種類や課税方式が異なり、判定には個別の確認を要するため、本記事では扱っておりません。
5.外国税が源泉徴収されている場合
国外の口座で利子・配当を受け取る際、現地で外国税が源泉徴収されることがあります。この場合、確定申告における各所得の収入金額は、実際に入金された金額ではなく、外国で源泉徴収される前の金額となる点にご留意ください。
例えば、配当の総額150,000円について現地で15,000円が源泉徴収され、135,000円が入金された場合、収入金額とすべき金額は135,000円ではなく150,000円となります。
なお、この外国税については外国税額控除の適用を検討する必要があります。
6.おわりに
基本的な課税関係は以上のとおり整理できますが、実際に申告に着手すると、実務上検討を要する部分が生じることがあります。例えば、外国税額控除の具体的な計算、外貨の取り扱い、株式等の売却損益との関係、外国の証券会社から交付される報告書の読み方、外国の非上場株式の配当を受け取った場合など、その内容は多岐にわたります。
当事務所では、国外の預金口座・証券口座に係る所得の申告業務について豊富な経験がございます。個別的なご相談や確定申告等のサポートも展開しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
【免責事項】
- 本記事は、執筆時点の法令・通達等に基づいて作成した一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の取引や個別事案に対する税務上の助言を行うものではありません。税法の解釈・適用は個々の事実関係により異なり、また法改正等により内容が変わる可能性があります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
- 国外が関係する取引の場合、日本国内の法令だけでなく、国外現地での課税関係や租税条約も考慮のうえ、課税関係を検討する必要があります。
- 本記事は、分かりやすさを重視するため、法令上の正確な用語や厳密な表現とは異なる、平易な表現を用いている場合がございます。
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