freee会計をはじめ、近年の会計ソフトの多くは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、帳簿づけの手間を大きく減らす機能を備えています。ただし、この仕組みが効果を発揮するかどうかは、ソフトの操作方法よりも前の段階、すなわち「事業のお金と書類の流れを、どう設計しておくか」に大きく依存し、ここが曖昧なままスタートすると、逆に手間が増える結果にもなりかねません。

 事前にお金周りの流れを設計し、freee会計の機能を利用できるよう落とし込めば、freee会計は明細の大部分を自動で取り込み、記帳・入力の手間を大幅に削減してくれます。本記事では、freee会計を使い始める前に整理しておきたいことを、個人事業主や一人法人等の事業を始めたばかりの方を対象に解説します。freee会計以外のソフトにも共通する部分も多いので、他の会計ソフトをお使いの方もご参考にしてください。

 なお、店舗型のビジネスの場合、現金・レジ・売上管理等の設計が別途必要になります。これらの論点は本記事では扱っておりませんのでご留意ください。

 また、創業前の準備全般(事業計画・創業融資等)については、別記事「創業する前に整理しておきたいこと」をご覧ください。

1.事業用の銀行口座を開設しよう

 最初に行うべきは、事業専用の銀行口座の開設です。

 法人の場合、法人名義の口座を開設し、社長のプライベート口座などとは明確に区分することが当然に必要です。しかし、個人事業主の方の場合も、プライベートの口座とは別に事業専用の口座を用意することを強く推奨します。事業専用口座を分ける理由は、次のとおりです。

  • freee会計に口座を連携すると、その口座の入出金明細がすべて取り込まれます。プライベートの取引が混ざった口座を連携すると、事業に関係のない明細を一件ずつ除外する作業が発生し、自動化の利点が薄れ、帳簿処理が煩雑になります。
  • 事業の資金残高が一目で分かり、資金繰りの把握が容易になります。逆に曖昧な場合は、事業用の資金を正確に把握することが不可能になります。
  • 税務調査等の際にも、事業用口座に取引がまとまっていれば説明がしやすくなります。
  • 口座を分けていない場合、税理士と契約した際に、事業と関係のないプライベートの入出金まで税理士に開示することになります。

 口座の開設後は、事業に関する入出金は、原則としてこの口座を通すようにお金の流れを設計することが重要です。この状態を作ることが、この後説明する事項の土台になります。

 なお、口座を選ぶ際は、インターネットバンキングが開通している銀行など、freee会計とのAPI連携(会計ソフトが金融機関等のシステムから明細を自動取得する仕組み)に対応した口座を選ぶことをおすすめします。

 また、個人のプライベート用の銀行口座をそのまま事業用に利用する場合は、各銀行の利用規約に違反する可能性があるため、事前に金融機関にご確認ください。

2.売上の請求・入金方法を整理しよう

 次に、売上がどのような経路で入金されるかを整理します。ポイントは2つです。

(1) 売上の入金先

 請求書の振込先、ECサイトや決済代行サービスの入金先、プラットフォームからの報酬の受取先など、売上の入金先はすべて1で開設した事業用口座に指定します。使用するサービスとfreee会計の連携が可能か、連携が可能であればどのような形で連携されるのか、事前に確認しておきましょう。

(2) 請求書の発行方法を決める

 請求書を発行する事業の場合、freee会計には請求書の作成機能があり、作成した請求書の金額が売上として自動で記帳され、入金明細との消し込み(入金と請求の対応付け)まで連携します。請求書をExcelや手書きで別途作成する運用に比べ、請求から記帳までが一本の流れになるため、freee会計を使うのであれば請求書の発行もfreee請求書上で行うことをおすすめします。

3.各種経費の支払い方法を集約しよう

 経費の支払いは、「freee会計に明細が自動で取り込まれる決済手段」に寄せることが原則です。例えば、次のようなものに集約します。

(1) 事業用クレジットカード

 事業専用のクレジットカードを1枚用意し、経費の支払いは通常このカードを利用するようにします。法人であれば法人カード、個人事業主であれば事業専用と決めた個人カードで構いません。カードをfreee会計にAPI連携すれば、利用明細が自動で取り込まれます。

 法人の方は当然、個人事業主の方も、プライベート用のカードとは明確に区分することを推奨します。プライベート用の支払いが多いと、それが全てfreee会計に連携されてしまうため、処理が非常に煩雑になります。

 なお、このカードの引き落としは1の事業用銀行口座から行われるように設定する必要があります。

(2) 交通系IC(モバイルSuica等)

 電車・バス等の交通費は、履歴等の管理がしづらい代表的な支出です。モバイルSuicaを事業用として利用すれば、利用履歴(日付・金額・乗車区間)をfreee会計に取り込むことができます。交通費は一件あたりの金額が小さく件数が多いため、手入力との差が大きく出る領域です。

 ただし、本記事の投稿日現在、freee会計への取り込み方法は、モバイルSuicaのアカウントの種類により異なっています。

  • これから新規にモバイルSuicaを用意する場合: アカウントは必ず「JRE ID」で発行されますが、freee会計はJRE IDでのAPI連携に対応していません(対応時期未定)。この場合、モバイルSuicaの会員サイトから利用履歴のPDFを出力し、freee会計の「モバイルSuicaのPDFで明細取得」機能(β版)で取り込む方法が基本になります。モバイルSuicaの仕様上、一度に出力できる履歴に制限があるため、こまめな出力が必要です。
  • JRE IDへ移行する前のモバイルSuicaのアカウントを引き続き利用している場合: freee会計に口座として登録し、API連携により利用履歴を自動で取り込むことができます。

 いずれの場合も、事業用のモバイルSuicaはプライベート用のものと区分し、チャージは(1)の事業用クレジットカードから行うようにすると、チャージと利用の両方の明細がfreee会計上でつながります。

 なお、チャージ時ではなく、利用した時点の明細をもとに経費として記帳することに留意してください。

(3) ECサイト(Amazon等)

 Amazon等のECサイトで消耗品や書籍を購入する機会は多いと思いますが、ここでも重要なのは、アカウント自体を事業用とプライベート用で分けること、及び、freee会計とAPI連携可能なサービスを利用することです。

 例えばAmazonの場合、法人・個人事業主向けの「Amazonビジネス」というアカウントがあり、freee会計とAPI連携することで、購入データが明細として自動で取り込まれます。プライベート用のアカウントと区分できるほか、請求書払いへの対応や領収書の一括ダウンロードができる等の利点もあります。

 事業用アカウントを作成のうえfreee会計とAPI連携し、支払い方法に(1)の事業用クレジットカードを登録しておけば、カード明細とECサイトの注文履歴が対応し、記帳も証憑の確認も単純になります。

(4) 現金払い

 慶弔費や一部の店舗での支払いなど、現金でしか支払えない経費は必ず残ります。現金払いは明細の自動取込を行うためのハードルが高く、通常はfreee会計への手入力と領収書の保管が必須になるため、できる限り(1)〜(3)を決済手段として利用することが重要です。

 現金で支払った場合の処理は、個人事業主と法人で異なります。なお、事業用の現金と現金出納帳を用意し、厳密に管理する方法が基本ですが、個人事業主や小規模な法人の場合は管理コストが大きいため、以下のような方法を推奨します(もちろん実際に事業用の現金がある場合は現金出納帳等で管理する必要があります)。

  • 個人事業主の場合: プライベート用の財布から支払い、決済口座を「プライベート資金」に設定して記帳します。こうすることで、「事業主借」(プライベートのお金で事業の経費を支払ったことを表す勘定科目)が自動で使用されます。
  • 法人の場合: 個人事業主のようにプライベート資金に設定することができません。この場合は決済口座を「役員資金」に設定し、役員個人が立て替えて支払い、後日会社から役員へ立替経費として精算する(事業用口座から役員個人の口座へ振り込む)方法が基本です。

4.領収書や請求書の管理方法を決めよう

 お金の流れの設計と密接な関係があるのが、領収書・請求書などの証憑(しょうひょう)の管理方針です。証憑は法令等の要請により、一定期間の保存が義務付けられており、「もらった後どうするか」を最初に決めておかないと、ソフトへの入力が進んでいても書類の山が残ることになります。以下、証憑の取得手段に応じた管理例を記載しますが、当事務所としてはfreee会計の各明細への証憑の紐付けも推奨しておりますので、あわせてご案内します。

(1) 電子データで取得した証憑

 メールで受け取ったPDFの請求書など、電子データで受け取った証憑は、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが必要です。freee会計では、電子データのまま「ファイルボックス」(証憑保存の機能)にアップロードし、取引の記帳と紐づけて管理することができます。

(2) 紙で取得した証憑

 紙の領収書等は、スマートフォンにインストールできるfreee会計のアプリからカメラで撮影してファイルボックスにアップロードすることができます。枚数が多く1枚ずつ写真を撮るのが難しい場合は、レシートを連続で読み取れるスキャナの購入を検討しましょう。

 なお、紙の原本の扱いには注意が必要です。撮影・スキャンしたデータのみを保存して紙の原本を破棄する場合などには、電子帳簿保存法の定める要件を確認する必要があります。少なくとも事業を始めた当初は、撮影後も紙の原本は破棄せず保存しておくことをおすすめします。

 また、紙の原本の保存方法として、当事務所では「月別かつ決済手段別」の整理をおすすめしています。整理の方法は事業者ごとの方針によりますが、ご自身の事業に合う方法をあらかじめ選択することが重要です。

5.おわりに

 freee会計を使い始める前に整理しておきたいことを、お金の流れ(口座・入金・支払い)と書類の流れ(証憑の管理)に分けて解説しました。共通する考え方は、「事業の取引が通る経路を最初に絞り込み、freee会計が自動で取り込める形に寄せておく」ということです。この設計ができていれば、日々の記帳は明細の確認が中心となり、経理にかける時間を大きく減らすことができます。

 なお、実際にこれらを行ってみると、意外とつまずく部分が多いのではないかと思います。freee会計とAPI連携したモバイルSuicaのチャージやAmazonビジネスでの購入時の処理方法、ECサイトで購入した物品についての証憑管理、大量の現金領収書がある場合などがその典型例です。

 当事務所では、各社の状況に合わせた経理体制の整備やfreee会計の導入についてご相談いただくことが可能です。お気軽にお問い合わせください。

関連記事

記事一覧へ戻る
参考法令等:電帳法4③、7

【免責事項】

  • 本記事は、執筆時点の法令・通達等に基づいて作成した一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の取引や個別事案に対する税務上の助言を行うものではありません。税法の解釈・適用は個々の事実関係により異なり、また法改正等により内容が変わる可能性があります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
  • 国外が関係する取引の場合、日本国内の法令だけでなく、国外現地での課税関係や租税条約も考慮のうえ、課税関係を検討する必要があります。
  • 本記事は、分かりやすさを重視するため、法令上の正確な用語や厳密な表現とは異なる、平易な表現を用いている場合がございます。
  • 本記事の情報に基づいて行った行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
記事一覧へ戻る